ここでは,研究に関連する参考図書を簡単な解説つきで挙げたいと思います.
・『Introduction to Solid State Physics』 Kittel,John Wiley & Sons Inc.
・『固体物理学入門』 著者:キッテル,出版社:丸善
おすすめ度:★★★★★(5:入門用として)
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もはや説明する必要がないほど有名な固体物理の本です.初版が確か昭和28年ですから,
かれこれもう50年以上たっているわけですか.おそらく世界でもっとも使われている
固体物理の教科書ではないかと思います.
改定のたびに内容はどんどん更新され,最近では初版の5割も残っていないという話.
若干細かいところを飛ばしてはいますが,わかりやすい描像としっかりした構成で,
固体物理を学ぶ人間にはもってこいの一冊です.これで一通り理解した後,細かな話の載った
それぞれの分野の専門書に行くと良いのでは.
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・『Magnetism: Molecules to Materials -Models and Experiments-』
・『Magnetism: Molecules to Materials II -Molecule-Based Materials-』
・『Magnetism: Molecules to Materials III -Nanosized Magnetic Materials-』
・『Magnetism: Molecules to Materials IV』
・『Magnetism: Molecules to Materials V』
Miller, Joel S. / Drillon, Marc (eds.),WILEY-VCH
おすすめ度:★★★★★(5:分子性磁性体やるなら持っておいて損はありません)
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分子性磁性体に関してこれでもかと並べ立てられた総説.
初期から最新(といっても2002年ごろまでですけど)までの研究結果をまとめ上げて,
物質,基本となる理論,実験結果,解析法,解析結果と分析まで幅広く実例が並んでいます.
リファレンスも多いですし,分子性磁性体の研究についてはこれを読めばよくわかる,
とりあえず買っておけ,という本です.
・・・まあ,問題といえば一冊25,000円程度ですので,買い揃えると10万を越えてしまう点でしょうか.
まあ,どうしても欲しいので買いましたが,さすがにこの価格は痛い.
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・『Principles of the theory of solids』 Ziman,Cambridge Univ. Pr.
おすすめ度:★★★★(4)
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ザイマンの固体物理の本です.こちらも幅広く網羅されていますが,『物質科学の基礎 物性物理学』なんぞよりは詳しく書かれています.
ただ,若干章立ての構成に疑問な点があったり,いくつかの章で重複した話題が出てきたりと
気になる部分が無いわけではありません.
が,特に伝導やフォノン周りの話はわかりやすく,かつそこそこ詳しく書かれているので
伝導物性をこれからやろう,とかいう方にはお勧め.
日本語版(『固体物性論の基礎』 著者:ザイマン,出版社:丸善)もあるようです.
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・朝倉化学大系9 『磁性の科学』 著者:大川尚士,出版社:朝倉書店
おすすめ度:★★★★(4)
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磁性の本です.が,ほとんどの部分はバルクの磁性というよりは単分子での磁性です.
一応単分子磁石など最新のトピックにも触れられていますが,基本的には単核,複核
錯体の磁気特性です.d 軌道の分裂や磁場中での効果,複核錯体における
スピン間相互作用など,磁性をボトムアップ型で理解するには良い本なのではないでしょうか.
物理寄りのアプローチですとまずスピンというものと相互作用があって,というのは
前提になるわけですが,ここではそれら個々のスピンの性質やらがどこからどうやって出てくるのか,
がよくわかるのではないかと思います.
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・『物質科学の基礎 物性物理学』 著者:溝口正,出版社:裳華房
おすすめ度:★★★☆(3.5:入門用として)
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赤い表紙の本です.榎研では赤本と呼ばれ親しまれていました.
物性に関して,X線,伝導,フォノン,磁性と一通り説明されています.
まあ,分量も分量なんで広く浅く,というのは仕方が無いところ.
物性の基礎全般をお手軽に大まかに学ぶにはちょうど良いのではないでしょうか.
ただ,全体的に誤記が目立つのはちょっと・・・.誤字脱字なら良いのですが,
式の符号が違ってるとか式中の項が間違ってるとか,式を信じると文と明らかに
矛盾している部分などが目立つのはいただけません.
まあ,改定されるたびに少しずつ直ってはいるんですが.
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・物理学選書12 『磁性体の統計理論』 著者:小口武彦,出版社:裳華房
おすすめ度:★★★☆(3.5)
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復刊されました.いやぁめでたい.
『磁性の科学』が分子の側から見た磁性ならば,こちらは磁性をバルクの側から扱うものです.
物理学側からの視点ですね.タイトルの通り,統計理論を用いて自由エネルギーやら
分配関数やら何やらを使って,微視的な部分にとりあえず目をつぶっても磁性の理論を
ちゃんと展開できるんだぞ,と.まさに物理的方法です.
まあ,微視的部分を完全に無視してるわけじゃないんですけどね.
ちょっと古い本なので読み辛い面はありますが,それでもバルクの磁性をやられる方は
読んでおいても良いのではないでしょうか.
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・『密度汎関数法とその応用 -分子・クラスターの電子状態- 』 著者:里子充敏,大西楢平,出版社:講談社
おすすめ度:★★★☆(3.5)
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DFTを使った計算をやっている人は多いのですが,なかなか日本語の良い解説書って無い気がします.
この本は,基礎理論,計算方法,実際の物質への計算結果について解説されている大変ありがたい本です.
計算をするにあたり気をつけなくてはいけない点や,自分で計算用のプログラムを作ろうとか考えると
重宝するのではないでしょうか.
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・朝倉物性物理シリーズ2『メゾスコピック系 』 著者:勝本 信吾
おすすめ度:★★★(3)
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メゾスコピック系の主に伝導に焦点を当てた本です.ジャンル的には狭いのですが,
本自体も薄めなこともあり比較的広く浅く,に近くなっています.
いえ,それなりには載っているのですが,本当に細かい部分はreferenceを参照,ということになっています.
まあ,概観をつかむのには良いのではないでしょうか.
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・『有機導電体の化学 -半導体、金属、超伝導体-』 著者:斎藤軍治,出版社:丸善
おすすめ度:★★★(3:有機導体やってる人に対してのみ)
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有機導体について日本語で書かれている数少ない本の一つ.まあ,有機導体自体がニッチな
研究分野なので仕方がないのですが.著者はMr. BEDT-TTFのGunzi Saito.いえ,特に理由はないのですが
榎研では斎藤軍治よりもGunzi Saitoの方が通りが良かったのです.
斎藤先生らしく,あまり細かい点は突っ込まず面白いところだけ掠め取ってくるような
構成です.ちょこちょこ間違いやら何やらがあるのはまあご愛嬌.
結晶合成に関してまで書いてある本ってあまり無いんじゃないでしょうか.
そんなに良い本というわけでもないのですが,有機導体について纏められているのはそれなりに便利.
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・化学総説35 『π電子系有機固体』 日本化学会 編,出版社:学会出版センター
おすすめ度:★★☆(2.5:なにぶん分野が限られてますし,古いので)
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タイトル通り,π系分子を用いた伝導物質,磁性物質に関する本です.
今となっては最新ではないのですが,買った当初はだいぶためになったものです.
ここに書かれている「結晶構造制御」の考えに興味を引かれたことが,ハロゲン化ドナーを用いた
有機導体の成果につながっています.
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・朝倉化学大系15『伝導性金属錯体の化学 』 著者:山下正廣,榎敏明,出版社:朝倉出版
おすすめ度:★★☆(2.5:分子性導体に興味のある人に対してのみ)
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分子性導体について書かれた本の一つ.買ったら榎先生も著者でした(まあ,前半の固体の電子論の部分だけのようですが).
分子性導体で出てきがちな現象についていろいろ書いてあるのでまあこの分野にあまり馴染みのない人
が参考として読んでみるにはいいのですが,その分野にどっぷりつかっちゃった人から見ると
特に売りも無くよく知ってる基礎的なことが書いてあるというなんとも微妙な位置づけ.
まあ,分子性導体に興味があって,どんなものなのか見てみたい,って人には良いのかも.
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